繊細さと大胆さを兼ねそろえた作品を数多く手がけ、
著名人やハイブランドを顧客に持つフローリスト、MAKOTOOKUDOMI。
いままでのことこれからの夢についてお聞きしました。
Q. これまでの経歴を教えてください。
A. 大学を卒業後、ライターとして雑誌つくりに関わっていました。
Q. フローリストになるまでの経緯を教えてください。
A. はじめはファッション誌や情報誌など、いろいろな雑誌で記事の執筆をしていました。
27歳の時に、料亭を営む実家の両親からそろそろ戻ってきて家を継いでくれないかという話があり、特にライター業を極めていきたいという気持ちも無かったので、実家に戻ることにしました。
ところが、料理に興味があったわけではないので、あまり家業に面白みを感じることが出来ず。料理を作るわけではなく、どちらかというと経営の方を見ていました。
そんな日々を過ごす中で、ある日ふとお店に飾ってある花が気になったんです。
定期的にお願いしていたお花だったのですが、まったく魅力を感じられない。これってもう少しやりようがあるよなと思ったのがお花に興味を持ったきっかけです。
それから少しずつ花って楽しそうだな、やってみたいなと思うようになったけれど、実家の料亭を継ぐという名目で実家に帰っていたしその時は花で身を立てていこうとは思っていませんでした。
そこから、仕事ではなく趣味としてお花をやり始めました.
そこから5年ほどは実家で仕事をしつつお花を趣味でやりつつ勉強しながらの生活をしていました。
お花の仕事をやりたいと父親に相談したところ、それは構わないけれど、まず花屋で働くことが必要だと言われ、渋谷にあるFugaというのフラワーショップで働き始めました。
ただ、ぎっくり腰で普通に働くことが困難になり、3カ月ほどで退社することになってしまいました。そのタイミングで友達から一般財団法人フラワーエディケーションジャパンでの講師の仕事を紹介されて、講師なら座りながらも作業ができるということで一時期は講師・理事として活動していました。
ところが、講義をしていると徐々に教える立場よりも自分が作り手で居たいという思いが強くなっていき、40歳の時にMAKOTOOKUDOMIを立ち上げました。
Q. ハイブランドの生け込みやウエディング会場の装花、芸能関連のお客様が多い奥富先生。
独立してから3年ほどでそういったお客様からなぜ依頼がきてるのか。
A. ファッション業界や芸能界などクリエイティブなお仕事をしている友人が多くいまして、そういった友人からの紹介で仕事のご依頼を頂くことが多いです。周りの友達も40歳くらいになり会社でも役職が付く立場になっています。
独立してお花を始めたんだけど、と報告してそこから広がっていきました。
1,2年はゆっくりと頑張っていこうと思っていましたが、
独立した年の4月1日に開業届を出して、次の日4月2日にCHANELの依頼を頂きました。
はじめてすぐには難しいかも、とも考えましたが、思い切ってやらせて頂いたところ、そこから今でも継続的にご依頼を頂く関係を築けています。
人との繋がりが仕事をしていく上でとても大事でありがたいと感じています。
Q. これまでの経験が、今の仕事に役立っている点はありますか
A. ライター時代は雑誌のページを作るうえで、どういう着地地点で企画や記事を書けば
読者に伝わるかという事をすごく意識していました。
その経験は今のお花にも生きていると感じています。
Q. ご実家の料亭から今の生活に役立っていることは?
A. それはないです。(笑)
でも、実家の料亭に戻ったことでお花を触るきっかけになったので、
お花の道に来るまでいろいろ経験して遠回りもしたけど、どの経験も私にとっては必要だったんだと思っています。
Q. フローリストとして一番やりがいを感じるのはどんなお仕事ですか?
A. 5千円の花束も50万円の会場装花も根本は同じで、喜んで頂くため、ご要望にお応えするために全力で取り組んでいるので、“一番”はなかなか決めづらいです。
いきなり50万とか100万円の依頼はきっと来ないだろうし、まずは5千円のブーケをどれだけ全力で取り組めるかというところが大切だと思っています。
Q. いちばん最初に大きい仕事をしたのは?
A. 独立してから1,2年目ですかね。パーティーの会場装花の依頼でした。
いきなり大きい仕事は来ないし、段階や回数を重ねてやっと大きい仕事を任せて頂けるようになると思っています。
独立して仕事をしていく中で、その時その時のタイミングの仕事がちゃんと入ってくる。
そういうタイミングを神様はちゃんと見ているんだろうなと感じます。
Q. フローリストとして活動してきて辛かったこと、大変だったことは?
A. とにかく朝早いので、早起きが大変。
あとは重労働なので体力的につらいと感じる時もあります。
ハイブランドやラグジュアリーブランドから依頼を頂いてお仕事させてもらっているので、絶対に失敗が許されません。その緊張感から来る精神的な苦労はありますね。
花は、出来上がるまで気が抜けないんです。例えば準備していた花の量では足りなかったり、頭の中でイメージしたものを、実際生けてみたら微妙だったりとか。
生け終わるまで分からない部分が多いので、そういう所は大変かな。
けど、そこがやりがいの部分でもあります。
Q. 今までで失敗というかお客様に満足いただけなかったご経験はありますか?
A. それは無いですね。
だからこそ、絶対に失敗しちゃいけないというプレッシャーにも繋がるのかもしれませんね。
Q. 奥富先生が独立して、お弟子さんというかアシスタントさんを雇うようになったのはいつ頃からですか?
A. 独立してから2年くらいの時ですかね。
Q. 先生がアシスタントさんに求める条件みたいなものはありますか?
A. やっぱりやる気が一番ですかね。
技術とか知識ってやれば誰でも叩き込めると思うので、経験者を優遇するとかいうことではないですね。
それよりもやっぱり人間性の部分が一番重要。
性格が悪かったり、ずる賢い、人に迷惑をかけてしまう、協調性が無い人はあんまり。そこの人間性の部分って、これから鍛えていくのは難しいと思うので。育ってきた環境であったりその人が生きてきいた中でのものを改善していくのは難しいですからね。
Q. たくさんの種類の花や植物はありますが、これが一番!と思うものはありますか?
A. 土が苦手なのであまり植物興味が無いんです。(笑)
かわいいなとは思いますけどね、土が嫌!(笑)
お花も季節によって、春になれば「ラナンキュラスが一番かわいい」って思うけど、秋になるとやっぱりこっちが一番ともなるので一番好きな花は決められません!
Q. またちょっとお花などとは離れますが、よくいく好きなお店、おすすめのお店はありますか?
A. 最近Aesopが好きです。
オーガニック系のスキンケア商品やシャンプーを取り扱うブランドです。
オーガニックが好き!というわけではなく、Aesopが好き。匂いがすき。
若いころは洋服とかアクセサリーや靴もたくさん買っていたけど、だんだん興味が無くなってきてしまって。
Q. オシャレな奥富先生から見て、わたしたち20代くらいの女性に向けて、やっておいた方がいい、ということはありますか?
A. 頭の先から爪の先までお手入れ。みたいな?(笑)
あんまり、着飾って魅力的になるよりも、自分自身が魅力的になった方がいいかなと思います。
服とかジュエリーに頼るのはやめた方がいいと思います。
なにもしていないけど素敵!という人のほうがいいかな。
昔自分自身が、ブランドものばっかり買っていた時期に友達に「最高のオシャレはユニクロのTシャツを着てもオシャレに着こなす身体作りだよ」と言われて。
物とかに頼っている自分はまだまだだな~と思いましたね。
Q.昔よくブランドものを買っていたということですが、その中で一番多くのものを買ったブランドは?
A. COMME des GARÇONS昔よく買ってましたよ。
今は全然興味が無くなってしまったんですけどね(笑)
自分の生活の中でプライベートをあまり重視しなくなって。
その分の体力とか時間があるなら仕事の方に向けてますね。
良い洋服とかオシャレな洋服を着るよりも、仕事がうまくいくかどうか。
そちらの方が今の自分にとって大事なことです。
Q. 最近のマイブームとかはありますか?
A. お料理ですね。
40代になってホームパーティーとかが増えて、自分のお腹を満たすだけじゃなく、
誰かに振る舞うっていうのが楽しいなと思うようになりました。
もともと手先は器用だし、実家が料亭ということもあってその血を受け継いでいたのかなと思います。(笑)
Q. 今後の展望
A. どうなりたいかって言われるとよくわからないですね~(笑)
人生なるようになると思ってるので。
どんな仕事でもどんな場面になっても楽しみながらやりたいですね。
最終的な目標とか着地地点とかはあまり考えていないです。
自分が今やれることを頑張ったら、次の仕事に繋がっていくので。
生涯フローリストでありたいとは思います。
いろんな場面でいろんな経験をしていきたいです。
Q. こんな場所のお花をやりたい!という場所はありますか?
A. ありますよ。宮内庁。
日本の皇室というか象徴なのでいつかはやりたいですね。
あとはオリンピック!2020年の東京の金メダルの選手に贈る月桂樹の冠や花束をつくれたらいいですね。
Q. 自身のお店を持つ願望は?
A. 持てたら持ちたいけど、あんまりこだわりは無いです。機会があったらもちろんやってみたいですけどね。
ショップやショップとかに置くギフトをプロデュースしたいなとは思います。
Q. 奥富先生が憧れるフローリストさんなどいらっしゃいますか?
A. ショップだとFUGAさんはすごいなと思います。
スタッフ皆さんがデザイン性を求めてプロ意識を持っていることがとても魅力的に思います。
<編集後記>
インタビュー中にMAKOTOOKUDOMI先生のチャーミングなキャラクターに引き込まれ、とても楽しい時間でした。
仕事に対しての姿勢、1番にお客様の笑顔の為にと動く姿。
なにより先生の人柄に惹かれるお客様が多くいるのだろうと感じました。
貴重なお時間をありがとうございました!